きみとずっと

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 期末テスト二日目の火曜日、弾む足取りで家を出ると、学校の最寄り駅で水沢に会った。 「おはよう、水沢」 「……おはよう」  沈んだ様子で表情が暗いし、目が合っても不自然に逸らされる。なにかあったのだろうか。 「どうしたの?」 「ああ、ちょっと……」  言葉を濁すだけで教えてくれず、仲村は首をかしげる。自分も水沢に話したいことがあるので、とりあえず話題を変えた。 「そうだ。誕生日プレゼント用意したんだ」 「……」 「楽しみにしてて」  水沢の表情がますます暗くなり、なにかをこらえるように唇を引き結んでいる。本当にどうしたのだろう、と思いながら言葉を続ける。 「それでさ、二十五日は――」 「ごめん」  相談をしようとしたら遮られ、悲痛な瞳で見つめられた。 「引っ越しが二十五日になった」 「え……」 「本当はもう少しあとだったんだけど、親の都合で」 「そ、そうなんだ」  だからあんなに暗い顔をしていたのだ。つらそうな水沢に、見ている仲村も胸が痛み、動揺が隠せない。水沢が本当に引っ越してしまうのだという現実と、彼の誕生日を祝えないというショックで言葉が出てこなかった。 「じゃ、じゃあ、二十三日の終業式のあとは?」 「え?」 「引っ越しの前日は忙しいでしょ? だからその前に……前祝い、みたいな」  自分はこんなに諦めが悪かっただろうか。それでもどうしても水沢の誕生日を祝いたかった。当日ではなくても、なんなら今日でもいいから、彼に「誕生日おめでとう」と言いたい。 「ありがとう」  ようやく水沢の表情が綻び、ほっとしながらも胸が絞られるように痛んだ。今度は仲村が彼の目を見られない。切れ長の黒い瞳を見たら、「なんで引っ越しちゃうの?」と水沢にはどうすることもできないのに責めてしまいそうだった。 「じゃあ……二十三日、学校が終わったら――どこにしようか」 「仲村の家でもいいか? うち、引っ越しの段ボールがいっぱいあるから」 「いいよ。じゃあ決まり。学校終わったらね」 「ああ」  一度立ち止まって、約束をしてからまた歩き出す。  胸が痛い。水沢は本当にいなくなる。今みたいにすぐに会えないところに行くのだ。
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