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【プロローグ】
窓の外は薄曇りの空。ほんの少しの風がカーテンを揺らしていた。
今年の夏は、また暑くなるのかなぁ……。
ミキちゃんは、一人、リビングのテーブルに座って頬杖をつきボンヤリとテレビを眺めていた。
つけっぱなしのテレビからは新発売した「Nintendo Switch」の生産が追いつかないとか、フィギュアスケートの浅田真央が引退したとか、そんなニュースが流れていた。
テーブルには、昼食用に用意した焼きそばと野菜スープが並んでいる。
中学1年になった息子の翔太は部屋から出てこない。スープはもうすっかり冷めてしまった。
「あーぁ」
小さな溜息をつきながら頬をさすると、指が濡れていた。
ああ、私また泣いていたのか…。
テレビを消して…また、溜息をつく。
どうしてこんなことになってっしまったのだろう。
私の何がいけなかったのだろう。
何度考えても答えは出ない。
すでに過ぎた日の思い出だ。
あの一冊の本に出会わなければ、
自分が何故生きているのかも分からなかった日々はいつまで続いていたことだろう。
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