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■ちょっとした変化
ゴールデンウィークは、3人でサファリパークに行ったりして楽しく過ごした。
そしてまた、日常の日々に戻ったのだが……。
その日、裕一は緊張した面持ちで帰ってきた。
「何かあったの!」
「うん、あった」
「何があったの?どうしたの?」
「あのさ、海外研修…アメリカのヒューストン」
「え?何それ?どういうこと?」
「俺にね、海外研修に行かないかって…そういう話があるんだ」
「えっ!それって何だかすごいこと なんじゃない!」
「うん…すごいことなんだ」
「それって、超エリートなんじゃないの!」
「うん」
「すごーい!」
「4年間…」
「ええっ!4年間!行きっぱなしなの!」
「もちろん 休暇とかはあるから、年に1回か2回は帰って来れるみたい」
「うーん…それって 登竜門 って言うか、エリートコース なんだよね…?」
「うん、まあ…。でも、出世とかなんとかじゃなくって、最新の技術が学べて、それを持って帰って 国内で役立てることができるから、すごい魅力的な話ではあるよな」
「研修って、いったい何を勉強するの?」
「うーん、例えば義手でも、指まで動かせるものも開発されているんだよ。そればっかりじゃないけど、より新しい技術を介護に活かしていく勉強ってことかな」
「へええ!なんだかサイボーグみたいだね!で、その話 受けたの?」
「いや まだ返事してない。」
「パパ すごい!かっこいいなあ!僕 パパのこと自慢に思っちゃうなあ!」
「私も、是非頑張ってほしいと思うわ。寂しいけど留守中は翔太と2人で頑張る!」
こうして裕一は 4年間 アメリカで研修に励むことになった。
裕一が出発する日には、みきちゃんも翔太も空港まで見送りに行った。
職場の人も何人か 見送りに来てくれていた。
不安で寂しい気持ちもあったけれど、その一方で 海外研修 という晴れがましい 旅立ちに、妻として誇らしくもあった。
その気持ちは翔太も同じようだった。
見送りから帰ってくると家が妙に広く、静かな感じがした。
「パパがこのハーモニカをくれたんだよ」
翔太が吹くハーモニカの音色が、静かな家に沁みるように響いた。
「パパもアメリカで頑張ってくれるんだから私たちも頑張ろうね」
「うん、僕も頑張るからね」
そんなことを言い合っていたのだった。
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