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■苦行
できるだけ傍で見守らねばと、仕事をやめようか、休職しようか、と迷ったが、所長から「在宅でできることは家でやってもよいから、仕事は続けなさい」と提案してもらえた。
それで半日ほどは自宅で事務仕事をし、一日一度は職場に出向くという形で続けるることができた。頑張ってケースワーカーになっていて良かった。
で、傍にいたら優しいお母さんになって、息子の状態をよくしてやれるかというと、そう簡単にはいかない。
担任から打開策として「症状が落ち着いているときには、親子で“別室登校”してください」と言われていたときは、しんどかった。
無理矢理(ほとんど怒鳴りつけて)学校に連れて行って、ドリルのプリントなどを何枚か渡されて、毎日翔太と二人で狭い教室で向き合って過ごす。
教室の外からは、元気そうな子ども達の声が聞こえてくる。
親子の会話なんて何もない。
ミキちゃんも精神的に参ってしまいそうだった。
翔太への話しかけも、随分トゲトゲした口調だったに違いない。
翔太だって辛かったのだろう。朝の腹痛は相変わらずで、更に、全く口をきかなくなってしまった。
カウンセラーと相談して、無理に学校に行くことをやめることにした。
「具合が悪いのに無理に学校に行くのはやめるよ」と言うと、翔太はとてもホッとした顔をしていた。私だって胃の痛みが楽になった気がするわ。
初めのうちは、どうしていいかわからなくて、学校の先生と話し合ったり、教育相談所のようなところへもいったけれど、何も良くなることはなかった。いや、むしろ悪化した。
今のままで良いと思っているわけではないけれど、あの頃よりは今の方が、まだましだ。
けれど……
裕一になんて言おう……。
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