■いよいよ夏休みになる

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■いよいよ夏休みになる

次に裕一が帰ってくるまでには、翔太のことを言っておかなくちゃならない。 学校に行っていないなんて聞いたら、ビックリするだろうなぁ……。 昨年帰国したときには、翔太はまるっきり元気にしていたんだもの。 成田に見送りに行ったときのことが思い出される。 あれは、たった1年前のことだったんだ。 夏になった。 裕一が帰ってきた。 成田にはミキちゃんが一人で迎えに行った。 帰宅する道中で、これまでの経緯を話した。 「ごめんよ 俺がいないから」 「そんなことないよ」 「もう研修を放棄して、帰ってきた方がいいんじゃないだろうか」 「だめだよ!翔太はパパが海外で勉強してるって事を、すごく自慢に思ってるみたいだよ。それにパパが研修を放り投げて帰ってきちゃったら、自分のせいでパパの素敵な未来を潰したって思って、きっと自責の念にかられちゃうと思うわ」 「けど…俺がいなくなって…だから…」 「ちがうってば!」 「父親不在ってのは、良くないって言われてるもんなぁ」 「ちがうってば!」 ああ、私が裕君を苦しめてるんだ…。 「きっと…私の育て方が悪かったのよね……」 涙がボロボロこぼれた。 「それはないだろ!君はずっと傍にいて、一生懸命頑張ってくれているじゃないか!」 「傍にいたらいいってもんでもないみたいね」 「翔太は、今も頭が痛くなったりしているのか? 「ううん、学校に行かなければ大丈夫みたい」 「そうか……」 裕一が滞在した数日間は、出かけたりすることなく、父と息子は、毎日一緒にハーモニカを吹いて過ごした。 「がんばれよ!」 裕一がそういって、頭をガシガシ撫でると、翔太は少し嬉しそうな表情を見せた。 「きっと良くなるから、大丈夫だから、裕君は研修頑張って!」 夏期休暇を終えて、米国に旅立つ裕一をそんな言葉で送りだした。 また翔太と2人の暮らしになった。
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