運命は定まらない

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ジャケットのポケットに手を突っ込み歩きながら、落ちていたノートのことを考えた。 もし自分がいま中学生だったら、中を開いてなにか書かれていないかをのぞき見たのではないか、という気がする。何年か前の少年マンガにあった、名前を書くと死ぬというノートではないか、と中二病丸出しな思考をしそうだからだ。友人たちを巻き込んで、悪い奴の名前を書こーぜ、とひと盛り上がりできただろう。 さすがにもう、そんなことで盛り上がる友人もいないし、自分自身も盛り上がれる気はしない。 現実に起きないことはわかっている。わかっているのを承知の上で、あの頃は、1パーセントの「もしかしたら」を存分に味わい尽くしていたのだ。それが、楽しかった。 なんだかんだ、俺も大人になってんだな。体だけでなく、考え方も。
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