運命は定まらない

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高校の卒業式を明日に控えた、少し肌寒い日だった。 進学先も決まって、暇を持て余して遊びに出かけたその道で、ど真ん中にこれみよがしにノートが一冊落ちていた。 新品でもないが、古く汚れているわけでもない。 どうしたものかと思案したが、落ちているものを拾って自分のものにするほど酔狂ではないし、そもそもノートなど特段欲しいものでもない。 もちろん、中を開いてみる気にもならない。 ノートの角をつまみ、すぐそばの電柱下にあるゴミ集積所に放り投げておいた。善行だ。 両手のひらを軽く擦り合わせて埃を払う仕草をし、その場を後にした。
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