ゴーストライター

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 私には敬愛する作家の先生がいた。  その名は小阪詩為(こさかうたい)。  ファンタジー小説を手掛けていて、主に若者向けに異世界転生ものや悪役令嬢ものを手掛けている。  そんな小阪先生の代表作と言われているのが、『トスーゴの魔法使い』という作品だ。これは小阪先生の作品の中でも異質の作品で、異世界転生ものでも悪役令嬢ものでもない。  魔法文明が花開くトスーゴ帝国にて、奴隷の少女がひょんなことから不思議な力に目覚め、やがて世界の運命を左右する戦いに身を投じていく……というストーリーだ。  ファンタジー色は強いものの硬派な作風になっていて、書店では一般文芸として扱われている。最初はライトノベルの扱いだったが、発売されるや否や口コミで話題になり、一気にベストセラーとなった。  こうして、『トスーゴの魔法使い』は作家・小阪詩為の地位と名声を大いに押し上げることになった。発売から2年ぐらいが経つ今でも、書店では常に目立つところに置いてもらっている。  私がこの本と出会ったのは1年以上前のことだった。  世間で評判になっていたので、興味本位で買ってみたのだ。  そして、1ページ目を読んだその瞬間から、私は衝撃を受けた。  最後まで目を離すことができなかった。  なぜなら、この作品は私が書いたものだったから。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加