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ラファエル様
使者天使の男は逃げるように走り去った。もつれながら。
静けさが包む中、ミカサはガブリエルのもとに降りてきていた。彼女の白い羽根は薄暗い空の中でほのかに光を放ち、穏やかな笑顔が彼の震える体を穏やかにした。
「ミカサ、どうだった?ちょっと怖がらせちゃったかも。」
「天使ってね、結構キレやすい子が多いんだよ。私も含めてだけど。」
ガブリエルは優しく言いながら、彼の肩に手を置いた。
ミカサは少し疲れた顔で頷きながら、彼女の言葉の重みを感じた。
光の剣で悪に立ち向かうことが、ただの戦いではなく、何か大きな意味を持っていることを理解していた。
その時、笑い声が耳に入る。振り返ると、ラファエルが彼らのもとにやってきていた。彼の表情は明るく、まるで何か面白いことを見たかのように、肩を震わせていた。
「ラファエル?」
ミカサが疑問の声を上げると、ラファエルは笑顔を崩さず、肩をすくめた。
「まさか、あのガブリエルが戦いの前線に出てくるとは思わなかったよ。君はいつも穏やかで、どちらかと言えば戦闘には興味がないと思っていたけれど。」
ラファエルは穏やかに言った。
————まるで怒りを隠すように。
「だから、私があなたたちの言うことを聞くとか思ったんだ?」
「でも、いい考えだわ。」
ガブリエルが返すと、ラファエルは目を見開いた。
「もちろんだけど、ちょっとしたギャグになったのは確かだよ。三大天使の一人、ラファエル様のご命令とはいえ、まるで子供のように剣を振り回す使者天使だっていた!!」
ガブリエルは楽しそうに笑った。
ミカサはこの二人の会話の間にに緊張感が高まっていくのを感じた。戦いの後のこのビリビリとした瞬間が、心の傷をえぐっていく。
いつまた戦いが始まってしまうのかという恐れもあった。
「帰ろう、ガブリエル。」
ミカサは心からそう思った。でも、そんなの言える雰囲気でないことは、赤子でも分かる。
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