愛しいあの人

ラファエルの運命（さだめ）

「ガブリエル…」ラファエルは静かに呼びかけた。

彼女の悲しみを消すためには、天界に帰るように促すことが彼にできる唯一の方法だと理解していた。

もし彼女が天に帰れば、彼女の悲しみの元であるループはそこで終わり、彼女は自由になれる。

しかし、ラファエルはガブリエルを愛していた。
彼女が微笑む姿が好きで、その笑顔が失われることを想像するだけで、心が引き裂かれそうになる。

彼は天使として、彼女を助けるための運命（さだめ）を果たさなければならないと知りながらも、自分の気持ちを押し殺していた。

「諦めれば、すべてが終わるんだ。」その言葉は、彼の心の中で響くだけで、彼女に伝えることは最後までできなかった。
ガブリエルがミカサを守るために立ち上がる姿を見て、ラファエルは胸が痛む。彼女の強さはラファエルを魅了するが、その強さが彼女自身を傷つけることを理解していた。

「ガブリエルもループだって気づいていても、天界に帰りたくないんだろう…。」
そう気づけば、もうラファエルにできることは天界に返す以外方法はないと感じた。

拘束してでも帰らせる。

それが彼に残された手段だと思い込んでいた。

やがて、ミカサが矢に貫かれる瞬間、ラファエルもまた、驚きが隠せなかった。

ガブリエルの絶望的な叫び声が、彼の心を刺し貫く。

彼女が再び悲しまなければならない運命を作ったのが自分だと信じれなかった。

彼は何もできず、ただその悲劇を見守るしかなかった。

「お願いだ、ガブリエル。次こそは、幸せになってほしい。」

ラファエルは心の中で願うことしか出来なかった。
ミカサの愛が、彼女の運命を変えることができると信じている一方で、ラファエルの願いが逆に彼女を傷つけているのではないかと、不安に駆られた。