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夢に向かって
「……描けない…。」
ミカサは静かな部屋の中で、一人、キャンバスに向かっていた。
光が窓から差し込み、部屋を柔らかな黄金色に染めている。
周囲には色とりどりの絵の具のチューブが散乱し、使用した筆が無造作に置かれていたが、彼の目はそれらに興味を失っているようだった。
キャンバスの上には、未完成の風景画があった。
青い空、緑の木々、そして真ん中に光をまとった一人の少女の天使。
しかし、どう描いても、その少女は生き生きとした表情を持たず、ただ静止画のように見える。
『君のことが知りたい』
そんなことを言ってから、もう何日も会っていない。
ミカサはため息をつき、筆を置いた。
自由に色を選び、思いのままに描いていた頃が懐かしかった。
今は、この心の暗闇の出口をただただ探し続けている。
「このままじゃいけない。」
彼は強く思い直し、もう一度キャンバスに向き合った。
「何かを描こう。」
意を決した瞬間、彼の中で何かが弾けた気がした。しかし、その感覚はすぐに消え、再び不安が押し寄せる。
心の奥底にある創造力は、どこか遠い場所で待っているようだった。
ミカサは再び筆を置いた。
周囲の色彩は、彼にとって遠い夢のように見える。
絵具の匂い、筆の触感、すべてが懐かしくもあり、悲しくもあった。
彼はただ、スランプから抜け出したい一心で、静かな部屋で、孤独と向き合うのであった。
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