『第一章 悪役令嬢の成り上がり』 せっかくゲット出来たのに……。

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『第一章 悪役令嬢の成り上がり』 せっかくゲット出来たのに……。

「ようやく届いたぁ~!」  コツコツと貯金すること2年間。ついに我が家に届いたんだ。  喉から手が出るほど、欲しかった液晶タブレット。  32インチの大型タブレットで、4K表示対応。    これで、今まで以上の創作ライフを送れる!    私の名前は、八百井田(やおいだ) 百合子(ゆりこ)。  今年で28歳になるアラサー女子。  職業はWebデザイナー。独身、一人暮らし。  ここ数年間は、彼氏がいないけど……全然問題なし!  だって、私は腐女子で姫女子だもん。  恋愛する暇があったら、神作品を漁っている方がマシよ。  それに現実世界の男なんて、どれも無理。  顔の造形を作り直したくなるもの。  可愛い女の子なら、友達としてイケるけどね♪ 「っしゃ~! コミケ近いし、原稿に力いれるぞぉー!」  その日の私は、浮かれていたのだと思う。  念願だった大型の液タブを手に入れて……。  仕事兼創作デスクの上に、新品でピカピカのタブレットを置いてみて。  嬉しくなった私は、その場でダンスを始めた。  最近、推しているアニメのエンディングテーマ。 『ニャンニャンボリキュア』を全力で踊っていると……。  足元に同人誌が置いてあることを忘れていた私は、滑って勢いよく転がってしまった。  頭から全身を強く打ち付けてしまい、激しい痛みで身体が動かない。  しかし、悲劇はこれだけでは終わらなかった。  私が床に倒れた衝撃で、近くにあったデスクまで揺れ始める。  まさか……と思った時には、もう遅かった。  先ほど机に置いたばかりの大型タブレットがゆっくりと、顔面に向かって落ちて来る。 「ウソでしょ……?」  次の瞬間、真っ黒のタブレットが私に襲い掛かって来て……。  それからの記憶はない。   ※  私、死んでしまったのかな?  でも、その割には周りがうるさい。  ざわざわと大勢の人が、私を囲んでいる。  恐る恐る、瞼を開くとそこには……。  背の高い赤髪の美男子が立っていた。  海外の人かな?  端正な顔立ちの持ち主で、その瞳は宝石みたいに輝いている。  アクアマリンみたい……。  そして、その隣りには煌びやかなドレスを着た少女。  この子もお人形さんみたいで、可愛らしい。  小顔なのに目が大きくて、唇は小さい。  長いブラウンの髪は、ハーフアップにして、いかにもお嬢様って感じかな。  私がその二人に見惚れていると、赤髪の青年がこちらに向かって指をさす。 「聞いているのかっ! お前は私の婚約者として、条件を満たしていない!」 「へ?」 「いや、条件とかそういう問題ではない。今までずっと目をつぶってきたが、もう耐えられない!」 「え、一体なにを言っているの?」 「とぼける気か! この会場にいるみんなも知っているんだ! お前はこの”オリヴィア”に対して、凄惨ないじめを繰り返していただろ!」  この人、海外のコスプレイヤーかな?  でも、日本語でやりとりしているし……。  なにが起こっているの? 「公爵令嬢、”ユリ・デ・ビーエル”! お前との婚約は破棄だっ!」 「誰それ……」
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