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3
兄貴は、賢かった。
兄貴は、医者になった。
ボクは、どうだっただろう。
ボクは、営業になった。しかし、一年もしないで辞めた。
ヒトとの関わりに疲れたから。
きっと、あの暴力的な父親がボクが仕事を辞めたと知ったら、殴りつけるだけでは許さないだろう。幼少のころからボクや妹を叩いていたんだ。
母さんが、ズルズルとその関係を続けることなく、離婚という即断をしてくれたことが本当にありがたかった。
母さんはボクの失職に関して「それでもいいよ」と、ポジティブにとらえてくれたらしくそう言った。けれど、それには理由がある。
きっとボクが兄貴ではないからだ。
期待されていない。だからこそ、得られている『穏やかな反応』なのだろう。これが兄貴だったらきっと母さんは悲観し、そして言うんだ。
「あなたは悪くないわ。きっと、仕事か――……そう、周りの環境と職場の人とあわなかったのよ。だから、諦めいで次があるわ。応援してる。転職先、決めてるの?」
なんて。
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