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再就職をせかされるよりはいいのかもしれない、とボクは思うようにする。
「それでも――……」
そんなことを思っていると、遠くの方で女の子の声がした。
ボクは身を起こして部屋を出て、廊下で立ち止まる。
見る限り庭にも廊下にも該当の女の子はいない。けれど、まだ楽しげな声は続いている。
その声が余程楽しそうで、ボクは興味にかられて庭に出て周囲を確認する。当然ながら女の子は敷地にはいないのだろう。
敷地を出て、キョロキョロとする。
周りには田んぼ、田んぼ、田んぼ。
高齢化でもう田んぼをしている家は少ない。場所によってはソーラーパネルが所せましと並んでおり、みなが思うような一般的な田舎の美しい光景は消え去り始めている。
あぜ道にコドモがいる。
逆光でその顔や服は分からない。
それでも彼女は、楽しそうな声を上げて、走り回って、それを見てボクは思う。
いずれボクの子供はああやって遊ぶのだろうか。
けれど、それにしては、なにか胸を掻き立てられるような不安がそこにはあった。
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