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「うわっ」
ガタンと車が跳ねてボクは我に返る。
「あぶねェ、ぼんやりしてた」
ボクの他に車内には誰もいないのにそう声を出してしまう。
あぜ道にタイヤを一瞬とられたらしい。ここは補修も後に回されてしまう程度の田舎だ。
周りは田んぼしかない。
ポツンポツンと街路灯が置かれているが、ヒドイ汚損が見受けられる。はたしてそれらしく機能するのか、といらぬ心配をしてしまう。――……母さんたちに似てしまったのか。
ボクは溜め息をついた。
こうも気落ちするのは、なにも今日に始まったことではない。
心配なのは、今から向かう実家にいる奈津美のことだ。
奈津美。遠藤奈津美はもうすぐ出産する。
実家の無い彼女のためにと実家に連れてきたのだが、インターネットで調べてみれば「妊婦を夫の実家に連れて行くのは良くない」とのような文章ばかりが見受けられた。
気を遣うストレスが母体、胎児にとって悪影響だ。
『これだからママから離れられないボクは君は――……』
そのような記事を見てボクはさらに落ち込んだ。
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