第一章 1日目 帰郷

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 1 「うわっ」  ガタンと車が跳ねてボクは我に返る。 「あぶねェ、ぼんやりしてた」  ボクの他に車内には誰もいないのにそう声を出してしまう。  あぜ道にタイヤを一瞬とられたらしい。ここは補修も後に回されてしまう程度の田舎だ。  周りは田んぼしかない。  ポツンポツンと街路灯が置かれているが、ヒドイ汚損が見受けられる。はたしてそれらしく機能するのか、といらぬ心配をしてしまう。――……母さんたちに似てしまったのか。  ボクは溜め息をついた。  こうも気落ちするのは、なにも今日に始まったことではない。  心配なのは、今から向かう実家にいる奈津美のことだ。  奈津美。遠藤奈津美はもうすぐ出産する。  実家の無い彼女のためにと実家に連れてきたのだが、インターネットで調べてみれば「妊婦を夫の実家に連れて行くのは良くない」とのような文章ばかりが見受けられた。  気を遣うストレスが母体、胎児にとって悪影響だ。 『これだからママから離れられないボクは君は――……』  そのような記事を見てボクはさらに落ち込んだ。
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