第一章 1日目 帰郷

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2   「おかえりなさい」  実家に戻り、荷物を車から出していると後ろから声をかけられた。 「ただいま。……えっと、動いて平気なの?」  振り返れば腹を大きくした妻がいた。 「大丈夫。むしろ動かないと……」 「そっか」  ボクはそう言いながら重たく大きな旅行カバンをそれぞれ両手に持ち玄関へ向かった。 「一応、準備する物買っておいたよ。ティッシュとか、タオルとかさ。後で見ておいてよ」 「……ありがとうございます」  奈津美は車に詰め込まれたボクの購入品をジッと見ながらそう呟いた。 「いいよ、そんなにかしこまらなくても」  苦笑してそう言うが、奈津美は何も言わない。  きっと、これからの事で頭がいっぱいなのだろう。
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