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「ただいま。母さん、戻ったよ」
そう言う前に、母さんはもう玄関で待っていた。
「おかえり。たいへんだったでしょう」
「慣れた道だよ」
「それでもだよ。荷物はそこに置いて、お風呂も沸かすから、食事は一九時にしますからね」
矢継ぎ早に色々と言われるのは慣れている。
テンションの高くなった母さんはいつもこうだ。ボクはそれを上手に「はい、はい」とだけ返事をしてかわしながら自室のある二階へと向かった。
木製の階段はギシギシと悲鳴を上げる。
元々、古い家だ。壁もところによって穴が開いているし、手すりを使えば指に木のささくれが刺さる。
二階につけば、空気の入れ替えのためだろう、ボクと兄が共同で使っていた部屋は開いていた。
ボクらの部屋は、使っていた頃の面影がまだあった。
二段ベッドと二つの学習机がそのまま放置されているが、段ボール箱が山積みになっている。家族の倉庫扱いをされているのは一目瞭然だった。
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