第一章 1日目 帰郷

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「智里は、変わらないんだ」  その隣の部屋を見、ボクは呟く。  二十九歳の智里は、もう四年間もひきこももりをしている。  幼い頃から変わった言動をする智里だった。  小さな男の子がこちらを見ているだの、小さな女の子が手招きしているだの色々と言っていた。  そんな可笑しな言動をする彼女ではあるが、ボクたちと同じように社会人になり意気揚々と都会に出て行った。しかし、ボクらと決定的に違うのは、彼女は心を病んでしまったことだ。  詳しくは誰にも教えようとしない。けれど、智里は病みすぎた故にオカルトに傾倒したとも言う。  家の鬼門を心配し、物の配置を心配し、それだけでは足りない、と、とうとうどこからか貰ってきた札さえ置こうとしたらしい。 (奈津美に悪影響を与えないといいけど――……)  もし奈津美に、これから生まれる子に変なコトをされたらたまったものではない。
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