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「二階を使ってないとなると、ボクたちが使うのは客間か」
埃と段ボール箱だらけの部屋を確認し直し、ボクは結論を付けると足早に一階へ下りる。
よくよく考えれば、妊婦にわざわざ急な階段を使わせるのがおかしいのだ。こういうところが兄貴と違って気を使えないところなのだろうか。
階段から下りて左に曲がれば細い通路があり、さらに左には扉が三つ並んでいる。
一つはじいちゃん母さんの寝室。
一つはひいばあちゃんの寝室。
一つは両親の寝室。
八十を超えるひいばあちゃんは認知症も悪化し今では寝てばかりいる。
「ひいばあちゃん。帰ったよ」
折角だから挨拶しようと扉越しに声をかける。
「入るよ?」
出来るだけ静かに扉を開けるが、ひいばあちゃんはやはりベッドに寝たまま何も言わない。熟睡しているのだろうか。今は十八時だから仕方がないのかもしれない。寝ているのかわざわざ顔を覗き込む必要などないだろう。ボクはそっと扉を閉めた。
じいちゃんとばあちゃんにも挨拶をしようとしたが、あの二人は働くのが好きな人たちだ。
「日が暮れたから今のうちに作業をしないと」
と、連日続く猛暑を気にして畑にかかりっきりなのだろう。ボクの予想通り隣の部屋にいない様子だった。
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