産んだ親、育てた親、育ったオレ

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その日、母親と妹の結菜がキッチンで話し込んでいた。 キッチンで深刻な話をしていると言うことは父親に聞かせられない話に違いない。アミは風呂上がりの麦茶を飲むついでにさりげなくその場に留まった。 天真爛漫で優等生の結菜がこうして母親と深刻な話をしている事が珍しく、つい留まったとはいえ重い空気が煩わしく、やっぱり部屋に戻ろうと結菜の脇を通り過ぎようとした時だった。 「お姉ちゃん、私・・子供できた」 結菜の顔を見たと同時に麦茶を吹いていた。 優等生タイプというのは往々にして計算高いところがある。 高3の秋に身籠るなんて・・アミは首から下げたバスタオルで結菜の顔を拭きながら 「変な風にとらないで欲しいんだけど、まだ・・間に合うんじゃ・・」 恐る恐る口火を切った。絶対乗ってくると思っていた母親は青い顔をして(くう)を見ている。顔面蒼白とはまさにこの事だろう。 「ダメかも・・」 結菜は消え入りそうな声で 「悩みすぎちゃった・・」 アミは抑えきれない鳥肌にゾワゾワしながら母親と妹の顔を交互に見る。 「8ヶ月、過ぎちゃった」 「えぇーーーっ!!」  驚きのあまり腰が抜けてその場に崩れ落ちた。咄嗟にお腹を見る。言われてみれば出ている。が、中年のそれとは違い、わからないと言えばわからない。 「あ、相手は・・?」 一通り、母親と話た後なのだろう。スルッと言った。 「死んじゃった」 「えーーーーっっ!!」 ってことは、「あの!」結菜がこくんと頷く。 春先に家族旅行の帰り道に交通事故にあった同級生がいると言っていたその子に違いなかった。
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