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メニューを見て、私たちはそれぞれパスタを注文した。芹沢くんがひき肉のボロネーゼで、私はベーコンのクリームパスタだ。
「芹沢くん、ありがとう。絶景を楽しみながらおいしいランチが食べられるなんて、すごく幸せ!」
目の前に好きな人がいるのも幸せ要素のひとつだ。それは言えないけれど。
私はうれしくて仕方なくて、パスタをフォークにくるくると巻きつけながらも笑顔になってしまう。
「そんなに喜んでもらえるなんて思わなかった。少しは元気出た?」
視線を上げると、芹沢くんはパスタを咀嚼しつつ私の表情をうかがうように見ていた。
「おととい、やっぱり会社でなにかあっただろ?」
「……」
電話では否定しておいたものの、心配されてしまうほど私は元気がないように見えたのだろうか。
芹沢くんは私が口を開くのを待っていたが、私はなにをどう話していいかわからない。
あの日の徳永さんとの会話をそのまま包み隠さずペラペラと喋るのも、口の軽い人間になった気がして嫌だ。
「もしかして高木さんにからかわれた、とか?」
「……え?」
「俺のことを意味ありげに見てきてたから、なにか変だとは思ってたんだ。なんなんだよあの人。まぁ、放っとくけど」
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