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どうやら私の表情が曇っている原因は高木さんだと見当をつけていたらしい。
芹沢くんが浮気したと勝手に決めつけた高木さんが、ニヤニヤとした視線でも差し向けたのだろう。
浮気に関しては私があれだけ完全否定したのに、どうしてそういう解釈になるのかと頭を抱えたくなる。
「ほんとに付き合ってるのかって高木さんに聞かれたの。だから、芹沢くんのアドバイス通り、合い鍵を見せつけといたよ」
「やっぱりまだ町宮を狙ってるんだな」
しつこい、とでも言いたげに芹沢くんが顔をしかめた。
高木さんを悪者に仕立て上げて申し訳ないけれど、この場はこれで切り抜けられそうだ。
「そういえば溝内さん、私にはやさしくなったけど、芹沢くんにはどう?」
「普通にしてくれてる。町宮と話したのもあって、あきらめてくれたみたいだ」
「そっか……」
芹沢くんとしてはこれで良かったのだろう。
溝内さんの気持ちを思うと私も悲しくなるけれど、すべての恋が実るわけではないから……。
私たちはカフェを出て、陽の光を浴びつつ展望台からの景色を楽しんでいたが、本格的に冷えて来たのでこの場をあとにした。
温かいコーヒーを買って車に乗り込む。
「寒かったよな。ごめん」
芹沢くんが運転しながら申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。寒いのは彼のせいではないのに。
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