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「菓子博に行ったの? いいなぁ。勉強になるから私も行きたかった」
芹沢くんの言う菓子博は、いわゆる“展示会”なので、メーカーの人間が大勢ブースに集まっている。
我が社は菓子類は製造していないが、いろいろと話が聞けるのでとても勉強になる場だ。
「今度の日曜までやってるみたいだ。時間がなくて俺も全然回れなかったし、一緒に行くか? 土曜とか」
私が残念そうにしていたからか、芹沢くんが気を使って誘ってくれた。
「いいの? 休みの日、つぶれちゃうよ?」
「そんなの気にすんな」
自分のスキルを上げるためとはいえ、土曜は休日なのに、私に付き合ってくれる芹沢くんはやさしい。
ふと、同期っていいなと思う。これが先輩や後輩なら気軽に頼めないもの。
しかし芹沢くんの休みを奪ってしまったのは申し訳なく思う。なにも予定はなかったのだろうか……デートの約束とか。
どうやら今は特定の彼女はいないみたいだけれど。
「じゃあ、時間とかはまたメッセージ入れるから」
「うん、ありがと」
少し屈みながらつぶやくように言い、自分のデスクへ戻っていく芹沢くんは手足が長くてスタイルまでいい。
出会った時からカッコいいと思って見ていたけれど、入社当時から彼は女性社員に大人気だったから、私なんか絶対に相手にしてもらえないと早々にあきらめてしまった。
同じ部署の同期という間柄のほうが楽でいいと、心の中で自分に言い訳をして。
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