プロローグ

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プロローグ

 暗闇の中で、小さなランタンをつけたような、ぼんやりとした薄明りが目の前に灯る。  相川千沙樹は、今自分がどこにいて、どんな状況になっているのか分からないまま、その明りに視線を向けた。その黄色い輪の中に、先端が艶やかに光る革靴が入り込む。 「こんばんは、相川千沙樹(あいかわちさき)さん。あなたには選択肢があります。このまま輪廻転生の波に乗るか、それともわたくしと死神になるか」  ランタンのような明りがするすると上へと引き上げられ、千沙樹もそれにつられるように顔を上げた。つやつやに磨かれた靴を履いていたのは、モノクルを掛けた燕尾服姿の男だった。  長めの前髪に少し隠されてはいるが、整った顔立ちで二十歳の千沙樹よりも少しだけ年上のようだった。燕尾服の似合う体躯と、柔らかで優しい声は女性が好みそうな男だ。  けれど見えるのは、その男だけ。これだけ光の輪が広がったのに、自分がどうやって彼を見上げているのかも分からないくらい、異様な空間だった。  経験はしたことないけれど、なんとなく本能で千沙樹は理解した。 「……僕、もしかして死にました?」  千沙樹が男を見上げ口を開く。すると男は少し驚いた顔をしてから柔和に微笑んだ。 「久々に頭の回転の速い方にお会いしました。おっしゃる通り、あなたの命は尽きました。わたくしは、あなたの魂を拾った、死神のミチと申します」
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