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しかしアシェッド王太子は取り付く島もなく、
「あほか。そういっておきながら悪役令嬢たちは『ざまぁ』するんだ。俺は騙されないぞ。殺してしまえば死人に口なし!」
と冷たく言い放った。
「鬼畜ーッ!」
思わずメリーウェザーは叫んだ。
アシェッド王太子はさらに続ける。
「婚約破棄の理由なぞ周囲に色々聞かれるのも面倒だ。俺はとにかくマリアンヌと結婚せねばならない。これこそが俺の結婚だ、水を差すような真似をされては興ざめだ」
アシェッド王太子は断固とした口調だ。
マリアンヌは王太子妃の座を非常に強く望んでいたからな。結婚しないのなら別れると、そしてもちろん全ての話はなかったことにすると、はっきり明言しやがった。
それどころかマリアンヌは、後に禍根を残してはいけない、とメリーウェザーを亡き者にすることも強く主張したのだ。
一介の令嬢が暗殺も平然と要求するなんてさすがに普通じゃない。本当に厄介な女だよ。まあそれでも、彼女が必要だがな。俺にはもう……。
アシェッド王太子も心の中で半分くらいはやり過ぎだということを認めつつ、それでも状況には逆らえないと、少しの譲歩も認めない姿勢を貫いていた。
メリーウェザーは必死で説得を試みる。
「いやいやいや、思いとどまってください! 大丈夫です、決してお邪魔になりませんから! なにも殺さなくてもいいじゃあありませんか。しかもうちは公爵家ですよ!? 私を海に沈めてうちの親が黙っているわけないじゃないですか!」
「安心しろ、これは事故だ」
「事故で済むかあぁーッ」
「それこそ、死人に口なし。そのまま死ね」
「ちょっと待てーッ!」
アシェッド王太子が問答無用の空気で周囲の従者たちに合図したので、メリーウェザーはとにかくアシェッド王太子を止めようとその手を掴もうとした。
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