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13.あいつは許しておけまい 後編
結婚式会場中の招待客たちはまたしても息を呑んだ。『海賊』って言った? それって縛り首じゃないか!
ざわざわざわ……
メリーウェザーは表情を変えずにマリアンヌに聞く。
「海賊のお爺様はこの度は参列なさっていないようですね。家を賭けた結婚かと思いますけど、さすがにこういった席に着けるほど厚顔ではなかったのでしょう。それとも身の危険を感じて? さんざんわが国でも悪さをなさったみたいですものねえ」
マリアンヌは顔面蒼白になった。
「わが国でも海賊行為を!?」
アシェッド王太子は叫んだ。
「はい。ちょっと色々あって、(海竜の国で)いっぱいお勉強したんです、私。そのときに、沿岸部での海賊被害のこととか、それを暗に推進する国がある事などを知りました」
メリーウェザーはしみじみと言った。
勉強が役に立った……!
マリアンヌは拳を握った。
「アシェッド王太子様! 海賊って、うちの家は政府公認ですのよ!」
メリーウェザーはうんうんと頷いた。
「そうですね、マリアンヌさんの国がやっていた公然の犯罪。海洋貿易の後進国でしたから、他国を陥れる目的で他国船に関しては海賊行為を黙認していたってアレですね。他国から散々批判を受けたものの、事実確認中とか犯人捜査中とか何とかでのらりくらりとやって、マリアンヌさんの国の商船だけは略奪されないという逆の信用で貿易額が拡大。他国がもういい加減許せない境地に入ったときには、マリアンヌさんの国の海洋貿易もある程度軌道に乗っていたので、ようやく海賊行為を禁止。マリアンヌさんのお爺様は時代の流れに乗って、海賊からうまいこと商家に転身」
アシェッド王太子も国王陛下も顔を顰めた。
一世代前はかの国の海賊船は海洋貿易にとって一大問題だったのだ。沿岸部の略奪行為も目立っていて、警備にたいへんな費用がかかった。
その担い手の海賊が、この王太子妃候補の祖父!?
我が国にとっては、なんともまあ、とんでもない国賊ではないか!
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