198人が本棚に入れています
本棚に追加
マリアンヌはきいきい喚いている。
「そもそもその方は何者? 急に出てこられても! その者こそ信用に足る人物かどうか」
「信用に足る人物ですわよ! 私の夫となる方ですもの」
メリーウェザーはムッとして答えた。
「は!? だってあなたはアシェッド王太子の!」
「だから、事故にかこつけてもう婚約は破棄されているのでしょう? 私が誰と結婚しようとあなた方には関係ないではありませんか!」
メリーウェザーはつんと澄まして舌を出した。
「とにかく、マリアンヌさんが海賊の孫娘ってことは証拠もあるんで、そんな経緯で、私を海に突き落とした下手人さんもアシェッド王太子様とマリアンヌさんに加担しても将来がないと判断したようです。自白した方が罪が軽くなると、マリアンヌさんとアシェッド王太子様の企みをしっかりと聞かせてくれましたわ。裁判でも全部話すと言っています」
すると、すっとアシェッド王太子とマリアンヌの前に人影が立ちはだかった。
それは、メリーウェザーの父、クーデンベルグ公爵だった。腹の底から怒りを感じているようで真っ赤な顔をしていた。手がわなわなと震えている。
「娘が事故死と言われ悲しんだ。しかし実際はおまえたちが殺そうとした、うちの娘を。許すことはできぬ」
「ひっ! クーデンベルグ公爵!」
アシェッド王太子は思わず後退りした。
「殺人は犯罪です」
クーデンベルグ公爵は低く響き渡る声で言った。
すでにクーデンベルグ公爵は兵士たちを手配した後だった。クーデンベルグ公爵の言葉を合図に、大勢の兵士たちはアシェッド王太子とマリアンヌを取り囲んだ。
「う……」
二重にも三重にも兵士に取り囲まれ、アシェッド王太子とマリアンヌはついに観念した。
クーデンベルグ公爵はふっと国王陛下の方を向いた。
「国王陛下。アシェッド王太子とマリアンヌ嬢の結婚は、王家の財務状況からすると多大な利益があるように見受けられる。陛下はうちの娘の殺害計画には関与なさっていましたか?」
国王陛下は背中を丸めながら首を小刻みに横に振り、
「いや、知らぬ。マリアンヌとかいう女との結婚は、そなたの娘の事故死の後に聞かされた話だ」
と蚊の鳴くような小さな声で否定した。
「ではアシェッド王太子とマリアンヌ嬢の罪ということでよろしいか」
クーデンベルグ公爵は念を押して聞いた。
国王は頷いた。
こうして、アシェッド王太子とマリアンヌはクーデンベルグ公爵によって正式に逮捕された。
最初のコメントを投稿しよう!