2.美形の海竜殿下に拾われました

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 その途端、海竜の男が驚いた顔をしたので、メリーウェザーは、 「あ、やっぱ引いてます? 婚約者だった人ってちょっと偉い人なんで、そういうこと平気でできちゃうみたいなんですよね」 と慌てて言葉を付けたした。  海竜の男はポカンとしている。 「婚約者が口封じに殺す? 全く理解ができないが……」 「ですよね~。あなたみたいな常識的な人が婚約者だったらよかったな~」  メリーウェザーは自虐的に泣き笑いしてみせた。  海竜の男は気の毒そうな顔をした。 「ずいぶんとひどい目にあったようだね。さぞつらかっただろう。しばらく私たちの国にいるか? 面倒はみてやる。帰る気になったら帰ればいい」 「え、いいんですか? ありがとうございます!」  メリーウェザーは思わず声をあげた。  この国にいさせてもらえるなんてとっても助かる! ちょっと今の状況でもとの国には帰りたくない! 「私はメリーウェザーと言います」  メリーウェザーは名乗った。 「私はリカルドだ。海竜の一族の(おさ)をしている」  海竜の男も名乗った。  メリーウェザーは喉の奥で「リカルド殿下」と(つぶや)いた。  リカルドは優しく言った。 「君は肺の水もまだ完全には出し切れていない。窒息状態が続いていたし、体は相当(いた)んでいる。その上、心までつらいとなると、不憫(ふびん)でならない。ゆっくり休みなさい。遠慮はいらないよ」 「優しいんですね。ありがとうございます」  メリーウェザーはリカルドの言葉に心からほっとした。  人間不信気味だった心が少し解きほぐされるような気がした。  リカルドの方は成り行きで拾ったとはいえ、メリーウェザーが気の毒でならなかった。 「傷を癒してやれればいいんだが」  そしてリカルドは、メリーウェザーがリカルドの邸で静養を続けられるよう、色々な手筈を整えてくれたのだった。
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