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3.美形を意識するなという方が無理がある!
さて、リカルドがメリーウェザーを保護することになったとはいえ、リカルドはいつも忙しそうにして邸を留守にしていることが多かった。だからメリーウェザーはなかなかリカルドと顔を合わせることはなかった。
しかし、リカルドはいつも気にはかけてくれているようで、留守の時も朝晩に何かしらのメッセージをメリーウェザーに言付けておいてくれていた。
婚約者に殺されかけたばっかりな上にここは見知らぬ土地。だからメリーウェザーはとっても心細かったのだが、リカルドの言付けはいつもメリーウェザーに安心を与えてくれたのだった。
リカルド殿下は優しい、とメリーウェザーは思った。
そしてリカルドが邸に帰れるときは、たいていメリーウェザーに声をかけてくれた。
「メリーウェザー。今日は帰れたから一緒に夕食を摂ろう」
「は、はい!」
メリーウェザーは顔を赤くする。
自分でも変だと思う。なぜこんなにリカルド殿下の顔を見ると胸がときめくのか。
しかしメリーウェザーは胸を落ち着かせる。
いや、別に私だって、最近まで婚約者とかいたわけだし、男性と食事ってくらいどうってことないけどね……。
っていうか、つい最近まで婚約者がいたじゃない。クソみたいな男だったけど、私だってそれなりに誠実に尽くしていたはずよ。それが、裏切られたからって、こんな急に別の人にときめいていいものかしら。いいえ、それはちょっと軽薄ってものだわ。落ち着け、私。
こうしてちょっとドキドキするのは、リカルド殿下が美形だから。美形だから、美形だから!
雌の本能みたいなものよ、きっと!!!
「どうかしたか、メリーウェザー」
メリーウェザーが見つめていることに気付いたリカルドが不思議そうな顔をする。
「あ、いいえ」
メリーウェザーは慌てて答える。
リカルド殿下にときめいてしまいました、なんて言えない。
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