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【episode01】
【Episode01】
ジータ・デュクロクは、東部地方にあるシェリデン国デュクロク領地を納める当主、カールソン・デュクロク伯爵と妻ハイリの娘として生まれた。マグノリアが両親を失った後、父の弟であるカールソン伯爵がマグノリアの後見人になってからは2人は姉妹である。
だが2人の育てられた環境は全く違うものだった。ジータ・デュクロクは、両親の愛情を一手に受けて大切に育てられてきた。美しい容姿も相まって、誰からも愛され、誰よりも贅沢を知っている娘だった。
一方、カールソン伯爵の兄であるアルストロ・デュクロクの娘であるマグノリアは、忌み嫌われ、時に哀れみの目を向けられて育てられてきた。誰にも愛されることもなく育ったのは、彼女の生い立ちによるものが大きく関与していた。
「貴様の父親は決してしてはならない罪を犯したのだ。代々守り続けたデュクロクの屋敷を燃やし、自らの命を捨てたのだから」
当主であった父は、深夜、酩酊状態で屋敷に火を放った。
事故当時、屋敷にゲストとして宿泊していた父の弟であるカールソンは、父が当主として生きることに悩みを抱いていたことを打ち明けたという。状況証拠からも自暴自棄により放火を行ったと、裁判官は判断した。
多くの犠牲者が出た中、火事の生き残りであったマグノリアは、捜索が始まり半月ほどしてから瓦礫の下から発見された。衰弱し痩せ細った身体、全身には火傷を負っており、生きていること自体が奇跡だった。発見が遅れたこともあり、身体中にある火傷の痕は成長したあとも肌の上に刻まれてしまった。
幼いマグノリアにとって、頼れる人はカールソン一家だけだった。
領主の忘れ形みである娘の後見人となったカールソンは、デュクロク家の事業である鉱山事業を引き継いだ。
全身を包帯で覆われたマグノリアを家族の一員として迎えたが、カールソンはもちろん家族も領民たちも見た目の恐ろしさから、腫れ物に触れるように扱い続けた。
それでもマグノリアには生きなければならなかった。屋敷の侍女と同じ扱いだとしても、腹を空かさずに生きていけるのなら、どんなことでもこなした。屋敷で役に立つように率先して働いた。
包帯が外れてからもそれは変わることはなく、今に至る。
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