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優は視線を落とし、カクテルグラスの中で氷が静かに揺れる音を聞いた。宗明に「自分が言ったとは言わないで欲しい」と頼まれたことを思い出し、言葉に詰まる。
「優……」
美乃梨の声が一層心配そうに響く。彼女の手が優の手にそっと触れる。
「ねえ、本当に何かあったの?」
優は深呼吸をし、心の中で決意を固めた。
「美乃梨……私たち、今の関係を続けてもいいのかな?」
その言葉に、美乃梨の表情が強張った。
「どうしてそう思うの?」
声の調子が少し強くなる。
「配信者としての美乃梨ちゃんがダメになっていくんじゃないかって、心配で…」
優の声は震え、涙が浮かびそうになる。それに対して、美乃梨の瞳が一瞬鋭く光った。
「優には分からないでしょう? 配信のことなんて」
その言葉は、冷たく突き放すようだった。優は驚きと悲しみで胸がいっぱいになり、立ち上がった。
「分からない人と付き合ってもプラスにならないわね」
その言葉を吐き捨てるように言い、バーを出て行った。
美乃梨は、つき放すように言ってしまった自分に驚いて、後を追いたかったが、身体が動かなかった。店内の静寂が一層重く感じられる。
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