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1. 抜擢
三宅優、26才、中堅ゲームメーカー『アメイジングステージ』のアシスタントディレクターだ。入社当初はシナリオライターを目指して三年間頑張ってみたが、結局芽が出ることなく、去年の春に人事を預かる取締役の松島慧に引導を渡され、アシスタントディレクターに職種転向した。
幼い頃から物語を作ることが好きだった。二つ下の妹に自分が作った物語で人形遊びをして、喜ぶ顔を見るのが嬉しかった。心の中には、自分が書いたシナリオでゲームを創りたいという思いが残っていたが、この三年間の結果を思い出し、無理矢理その思いに蓋をして奥底にしまい込んだ。
優は人には言えない奇妙な考えを胸の奥に仕舞っていた。それは、主役に成れる人は生まれながらにして、特別な顔を持っているというものだった。その一例がアニメの異世界もので、勇者に成る人は大概の場合、見ただけで判別できる顔で描かれている。きっと作画する人の深層心理に、主役の顔はこうあるべきというイメージが、無意識のうちにあるからそうなると、優は思っていた。
そして優はそういう顔を、男だったらヒーローフェース、女だったらヒロインフェースと呼んでいた。
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