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アシ(アシスタントディレクター)になってから一年が経過したが、優は自分の未来に希望を失いそうになっていた。
アシの仕事は雑用ばかりで、創造性とは遠くかけ離れている。その先にあるディレクターやプロデューサー職は、他の人の働きぶりを見る限り、とても自分には務まりそうもない。
しょせんヒロインフェースでない自分など、こういう仕事が似合っているから、慧も自分をアシにしたのだと、半場諦めていた。
そんな半熟の目玉焼きのような、表面だけ形を保ったままで仕事をしていたら、去年の秋に担当したプロジェクトで、白身を破られて固まりきれないドロドロの黄身を露呈させられた。
優は思い知った。
本当に仕事が佳境に入ったとき、他のメンバーは経験の少ないアシになど、存在すら忘れる。唯一仕事を指示してくれていたディレクターも、蜜月な関係のデザイン担当者と二人で追い込み作業に入って、優のことなど視界から消してしまった。
しかしそんなことより、チーム存続の危機に際して、普段冴えないおじさんだったり、自分よりいけてないと思った同僚が、みんなヒーローまたはヒロインフェースに変身したことに、優は今までにないショックを受けた。
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