4人が本棚に入れています
本棚に追加
チームの危機はみんなの頑張りで無事乗り越え、みんなも普通の顔に戻ったけど、自分だけ変身できなかった事実は、優の心に深い傷跡を残した。
こんなことでは、自分が輝く明日など永遠に来るわけない。
そんな風に自身の未来を疑っている中で、優は再び取締役の松島慧に呼び出された。慧の部屋の前に来て、何か失敗したかなとビクビクしながらドアを開けると、そこには既に二人の男女が来ていた。
ドアが開いた気配で振り向いた二人の顔を見て、慧は思わず、「うわわわ」と大声を上げてしまった。
「どうしたの?」
場違いな大声を訝しんで、慧が理由を尋ねた。
「いえ、呼ばれたのは私一人だと思ったので、他の人がいて驚いてしまいました」
「おかしな人ね」
幸い慧は何か重大な用件を伝えようとしているのか、優が苦し紛れについた嘘を追求することなく流してくれた。
「早くお入りなさい」
優は慧に促されて、二人の横に並んだ。
横目で二人の顔を盗み見て、自分が見間違えたのではないと確信する。
男の方は雨宮慎一。優とは同期入社で、以前絶望を感じたプロジェクトでゲームディレクターを務めた男だ。そこで見せた高いパフォーマンスは、伝説のように社内で語り継がれ、つい最近もスタープランナー三枝美南の新作をスマッシュヒットさせたばかりだ。
最初のコメントを投稿しよう!