小夜時雨

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小夜時雨

どれだけ冷たかったのだろう どれだけ寒かったのだろう あなたは何を思い生きることを やめてしまったのだろうか 小夜時雨の世界で煌めくことなく どんな言葉で最期に遺した灯火を 静かに吹き消したのだろう 今でも背負い続けるこの十字架を わたしは降ろすこともできない 助けていたと思っていた あなたは希望を語っていた 今宵も雨音がわたしを苦しめる それでも救われるのは 夢物語にあなたがこう声をかけた お前は悪くない、前を向いて生きてくれ あの大きな手でわたしの頭を撫でてくれた こぼれ落ちた涙のかけらを 手のひらに集めて見えたのは 優しいあなたの笑顔だった 止まない雨の世界で いつまでもわたしはさ迷いつづけている 優しいあなたの笑顔と姿を ずっと探し続けている
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