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大雅と新城は、テーブルを挟んで向かい合って椅子に座った。ふうっと、新城が大きく息を吐く。
「突然のことで戸惑っているだろう、ごめんな」
「……いえ、別に」
新城の口角があがる。白髪混じりの頭髪をぽりぽりと掻き、言葉を続けた。
「藤堂大雅くん。君を今日付けで、この児童相談所の一時保護所にて緊急保護をすることになった。……君の、命を守るためだ。これからのことを、わたしたちと一緒に、ゆっくりと考えていこう」
大雅は答えず、探るような目つきで新城を、そして部屋の中をぐるりと見渡した。笑わせんな。オレの命を守るだと? 緊急だと? ふざけてんじゃねえぞ。てめえらがオレのことを『緊急』だと判断するのに、いったい何年かかったんだよ。
「家には……」
「それもこれから考えていこう。ただ、藤堂くん、よく聞いてくれ。おそらく君は、ご両親と会うことはないだろう。そのための準備を、ここでしっかりと行うんだ」
そうは言われても、実感はわかなかった。かといって、いまの状況を打破すべく動く方法も思いつかない。納得のいかぬまま、大人たちに従うしかないことを、大雅は薄々勘づいていた。
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