第一章

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 しかし山本は、声を荒げることなく、笑いながらそう言った。まるで大雅が意固地な態度を示すことなどお見通しだと言わんばかりの余裕を醸し出していた。「たまたまだけど、今日の昼飯はカレーなんだ。特別に大盛りにしてやったからな、美味いぞ!」  大雅はそっぽを向いた。山本は、唐揚げだのハンバーグだのカレーライスだの、子供はそういうものが好きなんだろと言いたげな口調だった。  大雅がなにも言わないでいると、やがて扉がノックされ、お盆をもった新城が入ってきた。 「お待たせ。昼飯だよ」  そっとテーブルの上に置かれたのは、山本の言ったとおり、大盛りのカレーライスだった。付け合わせにサラダと卵スープ、切り分けたオレンジが一切れついている。  カレーライスの香辛料の香りが、大雅の嗅覚をくすぐった。ごくりと唾を飲み込む。食べたい。でも、これを口にすればオレはコイツらにほだされたも同然だ。 「俺たちがいたら食いにくいかな。……じゃあ、しばらくしたら戻ってくるから、そのあいだにゆっくり食えよ」
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