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空腹には抗えなかった。一人になった大雅は、そっとスプーンを手に取ると、カレーを一口すくい、口に入れた。ほのかに温かいそれは、美味かった。表面は乾燥しておらず、白飯もふっくらと炊き上がっている。
カチカチに冷えた白飯でも、カレーがかかっていれば、いくらか味はましであった。そう思っていたのに、作りたての料理を口にしたいまは、あんなものは到底人間の食べるものではなかったのだとさえ思えてきてしまう。
ぽとりと、大雅の腕に雫が落ちた。それが涙であると気づいた瞬間、次から次へととめどなく頬を伝って流れていった。情けない。なんで飯を食ってるだけで、泣いてんだよ。
部屋の外に感情が漏れないように、大雅はカレーを口に押し込み、声を殺した。嚥下と感情の波が混ざって、喉が鳴る。息が苦しくなって、鼻をすする。
ここは、食事をするのに制限時間なんてない。どんなものでも十五分で食わなければ、途端に拳がとんできていた今までとは違う。食べている途中で飯を取り上げられることもない。次から次に込み上げてくる感情を鎮めるために、少しくらい食事が遅くなっても、怒鳴り散らす人はいない。
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