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大雅にとってそれは、特別なことだった。張り詰めていた気が、ゆっくりとほぐされていくのを感じる。まだあいつらは信用するに値しない。それでもあいつらが戻ってくるまでに、目の前の飯をゆっくりと味わう安寧のひとときを与えられたことは確実だった。
それでも習慣とは怖いもので、大雅が食事を終えたのは、スプーンを持ってからちょうど十五分が経った頃だった。ごちそうさまでしたと呟き、お盆の上にスプーンを置く。手の甲でゴシゴシと口許をこすり、なにもない白い壁を見つめる。
山本が戻ってきたのは、それからさらに十五分後のことだった。
「おっ! ちゃんと食ってるな! 良かった良かった!」
新城の姿はない。山本は大雅の様子に満足したように頷き、反応も待たずに言葉を続けた。
「じゃあ、早速だけど、生活棟のほうに行こうか。心の準備は大丈夫か? まあ、出来てなくとも俺は連れていくけどな!」
なにが面白かったのか、山本はガハハと豪快に笑った。
大雅は黙って椅子から立ち上がり、山本の後ろについて部屋を出た。
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