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数十分前に歩いてきた方向とは逆向きに通路を歩いていった。壁の突き当たりは曲がり角になっていて、左手に通路が伸びている。飾りっ気のない無機質な空間に、ところどころ壁を補修をしたような跡が残っている。
こちらの通路にも、いくつかの扉が並んでいたが、中は何の部屋なのかは分からなかった。
突き当たりには、観音開きの大きな鉄扉がそびえていた。非常扉を白く塗ったようなそれは、見るからに頑丈そうな印象を与えてくる。
山本はその扉の前に立ち止まると、ジャージのポケットからジャラジャラと鍵の束を取り出し、そのうちのひとつを扉の鍵穴に差し込んだ。
カチャリと解錠音がして、山本がドアノブを回すと、甲高い軋み音と共に扉が開く。向こうとこちらの空間が繋がったとき、今まで遮断されていた喧騒が一気に襲いかかってきた。
「うおっ! 新人じゃん!」
大雅といちばん最初に目が合った少年が、ウェーイ! と叫んでこちらに近づいてきた。
「マサシ! こいつ中学生? 小学生?」
少年は大雅に興味津々だ。髪も眉も、短く整えている、見るからに素行の悪そうな少年だった。
「晃牙! いきなり絡むなびっくりするだろ!」
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