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珍しく師範に向かって反発をした大雅だったが、相馬は間髪を入れず、静かに口を開いた。「人の行動というものは、自分の意思に関わらず、必ず別の誰かによって評価される。お前がいくら反論を唱えても、自分が正しいと思っていても、お前の周りの人たちがそうじゃないといえば、そのとおりになってしまうことがある。そしてそれは、お前の普段の行いが、大いに関係してくるんだ」
大雅は黙ったままだ。なにも十七年を生きてきて、相馬の言ったことに初めて気付いたわけではない。この世界は不条理だ。誠実に生きていてもそうでなくとも、報われないことなどごまんと存在する。どうしようもないことだってある。歯を食いしばって耐え忍ばねばならないようなときに、大雅は少し我慢できなかっただけのことだった。
「大雅。お前は不器用すぎる。拳を鍛えるだけでは、どうにもならないこともあるんだ。……私がそういうことを、もっと教えてやるべきだったな」
相馬の腕が伸びてきて、分厚い掌が大雅の頭をそっと撫でた。そのとき。
「ううっ……あうぅっ……」
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