第一章

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 大雅は感情を決壊させた。あとからあとから、ぼろぼろと涙がこぼれてくる。泣いても事態は変わらない。自分がどんどん惨めになっていくだけだ。  変わらねばならない。自分の周りを変えるのではない。自分自身が変わらねばならないのだ。  学校を退学になって、自分の人生の舵が大きく変わったそのときに、大雅はようやく気付いた。自分の感情を剥き出しにして、世の中の不条理に立ち向かったとしても、必ずしも事がうまくいくはずがないのだと。  相馬はずっと忠告してくれていた。お前の生き方は損をすると。その言葉に反発していたのは自分だ。だが、大雅とて譲れぬものがあった。他のどんなことも師匠の言葉通りに正してきたが、自分の周りの大人たちが全員敵に見える……という点だけは、いくら相馬に諭されようとも頑なに考えを変えなかった。そのせいもあり、大雅は周りの目に『素行の悪い生徒』として認識されていた。  金色に髪を染め、自分の周りに誰も寄せつけないように振る舞った。学校において、他人との馴れ合いなど必要ない。煩わしいだけだ。どうせ誰も信用できる奴なんていないのだから。
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