第一章

6/62
前へ
/83ページ
次へ
 扱いづらい生徒の一人であった大雅は、教師たちからも生徒たちからも疎まれていた。腫れ物のように扱われる日々。髪型も、態度も、平凡な公立校では悪目立ちする存在。校則違反だと、教師がいくら注意しても、大雅はなにも改めることはしなかった。なにが彼をそんなに意固地にさせたのか。それは彼の生い立ちと、育ってきた境遇のせいであろう。  人望など皆無であった大雅が、校内で暴力沙汰を起こしたものだから、大人たちが彼の処分を退学と結論づけるまでは早かった。例えば彼の周りからの評価が、いまとは百八十度違うものであったとしたら、酌量の余地は与えられただろう。公平性を謳っている大人たちも、自分たちにとって邪魔なものを排除するためならば、結託して非情な判断を下すことがあるのだ。  相馬に拾われていなければ、大雅は人間として堕落していく一方だっただろう。この世界は、一度『普通』からはみ出た人間が、容易く這い上がれる設計にはなっていない。人並みならぬ努力が必要だ。そしてその努力の仕方を教えられなかった者たちは、藁にすがるように、存在しているかもわからない一縷の望みに賭け、だましだまし生きていくしかないのだ。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加