【episode3】

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 いつもと同じ食堂のご飯も、会話次第で不味く感じるのだなと思いながら食事を終えた。大地に送られ《研究室A》へ戻ってくる。天馬はまだパソコンに向かっていた。 「またな、夏希ちゃん」  大地はニコッと笑みを浮かべ、軽く右手を振った。私も笑顔を形作り手を振り返す。ドアが閉まったところで天馬に名を呼ばれた。 「あいつと気が合うなら、積極的に大地との仕事を回してやってもいいが?」 「いえ、彼のノリに合わせた方が良いと思っただけ。話しやすい反面恐ろしい人だなと感じたから」 「そうか」 「ゴミ処理の仕事、天馬が受けてくれたんだね。薬品や実験に関わるよりずっと気楽でよかった」  天馬は返事をすることなくテーブルの方へ向き直った。手にしているボールペンを、カチャカチャと忙しなくノックしている。 「どうかしたの? 何だか落ち着きがないみたい」 「そんなことはない」  天馬はそう答えたが違和感を拭えなかった。いつも冷静な彼とは雰囲気が違う。よく見ると、彼の前にあるパソコンのディスプレイも切られていた。 「考え事でもしてたの?」 「何でもない」  ボールペンをテーブルに置いた彼は腰を上げた。その手には一冊のファイル――私が提出したものだ。 「解毒剤の確認を終えたが何の問題もなく仕上がっていた。やはり城之内製薬研究チームの頭脳は本物だな」 「くどいくらい何度も確認したから。少しでもミスがあったら命はないだろうと思って」 「小さなミス程度で殺されていたら命がいくつあっても足りない」 「私は組織の研究員たちとは立場が違うもの。簡単に殺されてしまうに決まってる」 「今回の仕事は完遂したんだ。心配しなくていい」  天馬はファイルを戸棚にしまうと、大きな溜め息をつきながら髪を掻き上げた。疲れているのだろうか。それとも何かあったのだろうか。 「そういえば……ここ数日麻里奈の姿を見かけないけど。どこにいるの?」 「あいつにはあいつの事情があるんだ。余計な詮索をするな」 「……じゃあ、麻里奈や仕事に関する話以外なら聞いてくれる?」 「内容によるが」 「何か話題があるわけじゃないの。大地との会話が憂鬱だったから……あなたと雑談でもすれば少しくらい気が紛れるかなと思っただけで」  天馬は面食らったのか、逃げるように顔を背けた。 「ごめんなさい。私、面倒くさい女になってるね」 「別に、そんなことは……ない、けどな」 「……どうしたの? 随分と歯切れが悪いけど」 「俺は――」  言葉が止まる。  視線は床に落ちていた。 「今日はもう部屋に戻る。夏希も休んでおけ」 「……えぇ」  返事を聞いているのかいないのか、天馬は足早に出ていってしまった。いつも以上に素っ気ない。麻里奈の不在といい、組織がいつもと違う動きを見せているのだろうか――。
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