その闇の行き着く先

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とりあえず香坂の屋敷は修復も必要なので、 都内にある別邸へと明臣と蓮は移動した。 別邸なので本邸と比べれば手狭だが、 それでも充分に普通のお家より 大きいサイズの家である。 「それでは明臣様、蓮お嬢様、 私どもはしばらく通わせて頂きますね」  「ああ、不便をかけるがよろしく頼む」 通いになるのは執事とメイド長、 それからシェフは交代制だ。 他の者達にはちょうどいいからと 休みを与えることにした。 勿論、有給である。 その日は休むことを優先し、 メイド長が用意してくれた温かい飲み物を 飲んでそれぞれ別の部屋で 眠りについたのだった。 そして次の日から蓮も明臣も てんてこ舞いとなる。 「明臣様、会社の方からご連絡が」 「解った、これを蓮に頼む」 「かしこまりました」 明臣は普段の仕事に加えて、 火事の後処理や母や和馬の 入院手続きに終われていた。 そして蓮もそんな明臣を放っておくことは 出来ないので出来ることはやろうと、 香坂家のことはなるべく請け負っているのだ。 「これってこんな感じで大丈夫?」 「ええ、問題ありません」 蓮には執事とメイド長がついて サポートをしてくれた。 その日を処理や手続きへと費やし、 次の日には警察が聴取に やってくるのでその支度を行う。 明臣は細身のパンツに蓮が選んだ アーガイルのカーディガンを羽織り、 蓮は薄手のセーターに ロングスカートを合わせて、 警察の人達を出迎えたのだった。 話は蓮の両親と明臣の父が死んだ 火事の話にまで及んだ。 どうやら今回の火事も叔母によるもので、 和馬は消火しようとして重傷を 負ったことが証明されているらしい。 「まぁですが……小早川は殺意があったことを 認めていますからね」 「犯した罪は罪としてきちんと 清算させてください。 あいつがどうなろうと 私は受け入れるつもりです」 明臣の言葉に警察の人達は 頷いて帰って行った。 叔母に関してはあらゆる罪が 白日の元に晒され、 入院を終えてもまず自由になることはない、 という話だ。 「蓮、これはあの人の罪で罰だ。 ……これ以上、俺達もあの人には関わらない。 世間に迷惑をかけるわけにはいかないから、 金銭的な負担はするが、それ以上はしない」 「うん、お兄ちゃんはそれでいいと思う。 でも私はまだちゃんと叔母様と話せてないから」 「まだ関わるつもりなのか?」 蓮は頷く。 「私が浄化をすることで、 叔母様も変わるかもしれないし。 変わらなくても、それはそれで 1つのケースになるしね」 思ったよりドライな蓮に明臣は安堵する。 自身の母に心を尽くすことが どれだけ無為かを明臣自身が 痛感しているのだ。 「……もし、浄化して心を取り戻せるなら、 悔いることこそが罰になるもんね」 「ん?」 「ううん、何でもない」 罪とは、自覚をしてこそ罰となる。 蓮はそう思っていた。 己の犯した罪の大きさに、 気づいた時、叔母がどうなろうと、 それこそ自業自得なのだから。 蓮はそっと自分の胸を撫でる。 自分の胸の内は見えないが、 きっと黒い闇が蠢いているのだろう。 「とりあえず一段落したから 私、学舎に戻るね! 和馬お兄ちゃんが退院する時は連絡して。 出てこれるかは解らないけど、 メール送るから」 「ああ、これからはもっと気軽に 帰ってくるといい」 「うん!」 蓮はその日のうちに荷物を纏めると 朝イチで学舎へと帰ったのだった。 凛は蓮が出ていってから、 無精に拍車がかかっていた。 連日のように遅刻ギリギリで授業に 出席している。 教師の佐藤がこめかみに青筋を 引くつかせているのでどうにかしなくては、と 思うものの気力が湧かないので仕方ない。 ベッドの中で二度寝をしようと ゴロゴロしていると、足音が聞こえてきて、 手早く部屋のドアがノックされ、 ほぼ同時にドアが開く。 「凛!おはよう~起きてる?」 蓮の声に凛はベッドから飛び起きる。 「あ、起きてた!」 偉いじゃんと蓮は出ていった時からは 考えられない大荷物で入ってくる。 どうやら明臣にこれでもかと私物を 買って貰ったらしい。 とりあえず邪魔にならない場所に キャリーを置いて蓮は凛へと向き合う。 「ただいま、凛!」 凛は寝起きのバサバサの髪も 気にすることなく満面の笑みを浮かべると、 蓮を抱き締めた。 「お帰り、蓮!」
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