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新学期
新学期が始まる前夜、
蓮と凛はようやく寮へと戻ってきていた。
「凛、制服はすぐに出して
ハンガーにかけてね」
「はーい、わかってる~」
凛は制服を取り出して、
明日の朝にすぐに着れるよう用意しておく。
「ごめんね、明臣お兄ちゃんが
最後だからって引き留めるから……」
「めちゃめちゃ有難いよ。
美味しいご飯は食べさせてくれるし、
蓮に便乗してわたしまで
お洋服買って貰っちゃったし」
色違いのお揃いワンピースを
買って貰ったのだ。
蓮はこの前の買い物では夏物と秋物を
買っていたので、
今回はがっつり冬物を買って貰っていた。
前回の明臣は店員任せだったが、
今回は凛もいた為に前回以上の
圧で蓮は試着したのだ。
その仕返しとばかりに凛にも可愛い服を
たくさん着て貰って楽しんだ蓮だった。
「でも明臣さんが蓮の家庭教師として
雇うって提案してくれたお陰で、
割りと気兼ねなく過ごせちゃったし」
「その分、がっつり勉強させられたけどね……」
凛が楽しく過ごせたなら良かったと思うが、
長期休みだと言うのにがっつり、
勉強させられた蓮は若干、遠い目になる。
「学生の間は天使としての報酬も
お小遣い程度だし、
ちゃんとした定期収入があるだけで
どれだけ生活が安定するか……!」
「そ、そっか……良かった」
力説する凛に蓮は頷くしかない。
叔母に虐められてはいたし、
ろくに私物も与えられなかったが、
蓮は生活費を気にしたことはなかった。
香坂という家はやはり蓮を守っていたし、
守られていたのだと改めて蓮は自覚した。
「改めて今学期もよろしくね!」
バイト代が出るので今まで以上に
やる気を漲らせてある凛に、
蓮は笑ってよろしくお願いしますと
頭を下げる。
お互いに笑って、
明日の始業式に向けて、
ゆっくり休むための支度を始めるのだった。
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