新たな学園生活

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新たな学園生活

「凛、いらっしゃい!」 蓮は満面の笑みで凛を迎え、 持っていた荷物を抱えた。 寮にも空きが出たので調整することになり、 2人は同室になったのだ。 学園は長期休みでの帰省は 認められているものの、 普段は外から隔離状態である。 なので寮の編成には柔軟に対応していた。 勿論、希望者には特別料金とはなるものの、 個室も用意されている。 凛はこれまで個室だったが、 この度、晴れて蓮のルームメイトとなった。 「あー、疲れた~」 荷物の運び入れと整頓を終えて、 凛は自分のベッドへと寝転ぶ。 「お疲れさま、凛。 お風呂を用意したから、ゆっくり入って?」 自分のことではないのに整頓を 手伝ってくれていた蓮がバスルームから 出てきてそう言った。 個室だった自分の部屋にもお風呂はあったが、 無精がたたり、ろくに沸かしたことはない。 凛は驚いたが折角なので、 久しぶりのお風呂を 堪能させてもらうことにした。 お湯を張ったそう大きくはない、 それでも寮の部屋についている物として、 充分なサイズのバスタブには、 蓮がお気に入りだという入浴剤も入っている。 「マジか~、女子力たっか……」 乳白色のお湯に入浴剤の香りが バスルームに満ちている。 美肌効果もあるというお湯で 身体をマッサージしながら、 凛はポツリと呟く。 置かれているシャンプーのボトルなんかを 見てもそこらの薬局に売っている物ではない。 そういや蓮はいつも髪や肌が艶々で、 いい匂いがしていたと思う。 凛は己の容姿がやたらと褒められることを 自覚しているが、そこに一切のお手入れはない。 薬局で売ってる安い化粧水なんかを 適当にぬってるくらいだ。 それが余計に同性から顰蹙を買うのだが、 興味がないので仕方ない。 興味はなかったが入浴剤の香りも とても良かったし、 お風呂上がりに蓮が丁寧に、 髪を乾かしてくれるのも、 ものすごく心地よかったので、 蓮に対しても同じように乾かすことにする。 初めてなので慣れなかったが、 蓮はすごく喜んでくれたし、 蓮の髪の艶が自分の手入れでだと思うと、 充足感が凄かった。 初日以降、お互いに髪を乾かし合うのが 2人の日課となっていく。 蓮は凛の白く輝く髪を綺麗だと言うが、 凛は蓮の黒い艶のある髪が素敵だと思う。 お互いに好きなものもあれば、 嫌いなものもある。 お互いの好きも嫌いも理解できないことも。 これからお互いを知っていくほどに、 お互いの知らないところを また見つけるに違いない。 それでも今はお互いを知りたかった。 解り合いたかった。 ーーすべてを解り合えるほどに。 お互いにベッドに入っても、 お喋りは止まずに、 結局、1つのベッドで一緒に眠った。 今はお互いに何も知らないまま、 2人は穏やかに眠る。
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