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勉強と特訓
「教科書を読み込むのもいいけど、
覚えることなんて極一部よ。
それが何なのかをしっかり理解しなきゃ」
「なるほど……」
辞典並みに分厚い天使用の教科書を
開きながら凛の言葉に蓮は頷く。
凛のノートを見せて貰いながら、
徐々に重要な部分とそうでない部分が
解るようになった気がした。
そして実地の訓練でもーー、
「一番大事なのは集中力ね。
人によって集中の仕方はそれぞれだから、
自分の一番集中できるやり方を探して」
「集中……」
うーんと蓮は悩みながら試行錯誤する。
改めて自分が一番、集中できるやり方と
言われてもよく解らなかったからだ。
凛はそれ以上は口を出さない。
蓮自身がその答えを
見つけないといけないからだ。
少しずつではあったが蓮は今までより、
勉強が楽しくなったし、
実地試験でも格段に成果を
出せるようになっていったのだった。
「ここ最近の香坂さんの成長ぶりには
目を見張るものがあるわ。
……それが教師の教えによって、じゃ
ないのは少し問題だけれど」
やれやれとため息をつく担任教師に、
凛は肩を竦める。
「藤咲さん、他の子にも教えてみない?」
「友達ならまだしも、他の子にも教えるのは
問題じゃありません?」
あくまで凛はイチ生徒だ。
そうよね、と担任教師は笑う。
「それにわたしから教えて貰ったやり方を
他の人に言ってもいいかって、
蓮に聞かれて構わないって言っておいたから、
そのうち広まると思いますよ」
穏やかに笑みを浮かべる凛を見て、
担任教師は蓮との出会いは本当に、
彼女にとって良きものとなったのだと
実感した。
「いちいち蓮がわたしから教えて貰ったって
言うもんだから最近は他の人達からも
お礼を言われてます」
疲れると息をつく凛が素直でないことは
数ヶ月、担任として関わり理解している。
お礼を言うくらいであれば問題はないだろう。
「さて本題ね、天使としての活動ですが」
凛は研鑽する為に学生のうちから
現場に出ている。
勿論、監督役としての教師が
傍についてこそだが。
スケジュールを言われ、
凛は頷いてスマホへと入力していく。
「先生、蓮はいつ現場に出るの?」
「ーーえ?」
「関われば解るわ、
蓮の天使適正、ダントツでしょ」
凛に担任教師は笑みを返す。
「個人情報よ」
「別にいいけど……蓮が現場に出る時は
わたしも同行させてよね」
そう言って凛は蓮が待っているからと
出ていく。
踏み込んでは来なかったものの、
誤魔化されてはいないだろう凛に、
担任教師は深いため息を吐いて呟いた。
「優秀すぎるのも困りものね……」
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