蓮の問題①

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蓮の問題①

それから程なくして、 蓮の初の現場入りが決定したが、 あえなく失敗に終わった。 「闇を祓えない?」 「うん……」 蓮から相談を受け、凛は首を傾げる。 どういうことか理解できなかったからだ。 「祓えないって……振り分けられた仕事の レベルに間違いがあったってこと?」 「そういうことじゃなくて……」 蓮の話を細やかに聞いて、凛は驚く。 どうやら蓮は闇自体に感情移入してしまい、 上手く力を発揮できないらしいのに。 凛は闇は勿論、闇を産み出す人間にも 感情移入なんてしたことはない。 そもそも闇は祓うものとしか思ってなかった。 「わ、解っては……いるんだよ? 天使が祓わなきゃ闇は消えないし、 そうなるとたくさんの人が巻き込まれて、 傷つくことになる。 何より闇を産み出した人が 罪を犯さないうちに、重ねない為にも 迅速な対応をしなきゃいけないんだって」 「そうね」 「解ってはいるんだけど、上手く出来なくて、 ……先生には同情してるからだって言われて」 先生は単純に運転手や保護者として いるわけではない。 天使として後輩がミスをしたらカバーを する為にも傍についているのだ。 蓮が祓い損ねた闇は先生が祓ったので、 表向き依頼は成功している。 けれど間違いなく蓮の天使としての 評価は著しく下がったはずだ。 凛も何かしらのアドバイスをしたが、 同情どころか蓮が闇に 感情移入していることにさえ凛には 驚きなのでアドバイスのしようがない。 「そうねぇ……」 荒療治かもしれないが、と前置きして、 凛は蓮へ1つ提案した。 「本当の本当に見学だけですからね! 絶対に私や佐藤先生から離れないように!!」 「はいっ」 「も~、田中先生ってば 何度も同じことを言って~、 香坂さんだって小さな子供じゃないんだから、 1度言えば解りますよ」 凛の担任教師である佐藤瑞穂(31)独身が 何度も同じことを繰り返すのに、 蓮は何度も頷き返事をしていた。 それを蓮の担任教師である南城るる(22)が ため息をついて肩を竦める。 そう今夜はまた凛の仕事を見学にきていた。 前回と異なるのは今夜の仕事か 緊急性の高い案件で闇のレベルは Sに相当すると見られていることだ。 ちなみに闇のレベルは  影響があるとされる人数により異なる。 Fは精々、数人を巻き込む程度で、 そこから怪我人の有無や怪我の程度により、 ランクが上がっていく。 学校1クラスでレベルはC。 学年だとB、学校全体だとAとなる。 (あくまで目安) なのでSというのは既に死亡者が 出ている案件なのだ。 『思い切りタチの悪い案件に関われば 同情とか気持ち吹っ飛ぶかも』 という凛の発案だった。 なので佐藤がナーバスになるのも 当然ではあるのだ。 「あのね、南城先生!もう少し真剣に……」 佐藤が頭を抱えるのに南城は 佐藤の腕を引いて、蓮には聞こえないよう、 話をする。 「香坂さん生真面目なので、必要以上に 気負ってしまいます。 だからここはあえて明るくいきましょう~」 「……それはそうね、香坂さんなら そっちの方が心配だわ」 「それに私と佐藤先生がついてるんですから、 何か起きても大体は対処できますよ~」 あい変わらず間延びした声で 南城は出来てないウィンク(両目を閉じてる)を 佐藤へとして見せた。 「蓮も天使として現場には出たわけだし、 今回は詳細な情報も開示するから」 そう言って凛は依頼書と共に 届けられた資料を蓮へと渡した。
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