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「有楽町、有楽町です。JR線、都営線お乗り換えの方は――」
大型駅地下通路、行き交う人々、自動改札の電子音。
「ならもう別れようっ。サヨナラ!」
叩き切ったスマホを投げつけたあたしは、即後悔、追ってダイブ――。
「痛った~……」
頭から流れてきて口に入った液体は……鉄の味。
「ぽん太の広場」と銘打たれた、信楽焼の狸が群れ成す一角だった。あたしはその一人(?)に体当たりしてしまい、けれどあたしのショックは流血よりも。
「ギャー! 3時間並んでゲットした有名店の幻のクッキーが!」
ダイエット失敗続きのあたしの重量のせいで無残。
「もしもし?」
オダブツかと思ったスマホが生きていた。あたしはそれを引っ掴むと怒鳴った。
「別れようって言ったでしょ、稔のバカッ!」
相手は一瞬沈黙した後。
「稔って誰?」
テノールの声だった。稔はバリバリのバスだ。
「も……もしもし。誰?」
「そっちこそ、誰?」
相手は相原誠也、高校生、だとのたまった。
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